雛型・フォーマット・モジュール化したデザイン作業

単にデザインすると言ってもその意味する範囲はかなり広くて、デザイナーと呼ばれる人だけの仕事とは限らなくなっている。何かをゼロの状態から生み出すことと思われているかもしれないけど、まぁそれは神様くらいしか出来ないことかもしれない。クリエイター(Creator)という言葉もずいぶん安売りされて来たかも(笑)。だからデザインするという行為は、そんなたいそうなことでもないのかもしれないなぁ。

アイデア出し

何か企画すること自体が『デザイン』することだと思うし、それで言えば営業マンはデザイナーでもある。もっと言えば、会社を経営することも政治的な活動も、デザインすることだと思うのだ。

そしてデザインするということは、整理整頓する作業のことでもある。そういう意味では、やはりゼロから何かを生み出すということではなくて、あれとこれを組み合わせてあるカタチにして行くことだったりする。その整理整頓を効率よくやるために、それぞれが工夫をしているわけです。

例えば、雑誌を作るのだったら、ターゲットはどの層でどんな内容のものにするのかから始まり、全体の構成を組み立て、各章ごとの内容に合わせてどんなレイアウトにするかフォーマットを決めて、統一感を持たせるなど。そういう決めごとをしておけば、次の号の仕事が始まる際、作業がしやすくなるし読む側も読みやすい。

レイアウトサンプル

細かいことを言えば、こんな感じでノドや小口何ミリ取るか、本文の書体やサイズ、行間や1行何文字かとか決めておいてその約束事のなかでデザインして行きます。印刷物を作るためのデザインなら、印刷のルールに沿った作りをしないといけないように、それぞれのデザインの目的によってデザインの仕方のルールも変わって来る。

そんなわけで、デザイン作業自体の効率化と統一性を持たせながらヴァリエーションを作るために、モジュール化させて進めることがあります。

モジュールとは、機能単位、交換可能な構成部分という意味の英単語。システムの一部を構成するひとまとまりの機能を持った部品で、システムや他の部品への接合部(インターフェース)の仕様が規格化・標準化されていて、容易に追加や交換ができるようなもののことを意味する。

元々、建築業界で使われてた用語のようです。モジュール化で思い出すのがあの撤回されたエンブレムの制作のプロセス。

撤回されたエンブレムモジュール

こうして見事にA〜Zまで、1〜10まで作れちゃいます。悪くない。うまいと思います。当時個人的にはこのエンブレムでいいと思ってましたが、これ以外のことが原因で撤回されてしまって、作った本人も無念だったろうなと思いました。

で、こうした作り方や考え方が必要になる場面は多々あると思われます。

モジュール的な作業が有用になりそうな場面を想像してみると、例えばチェーン店を展開しているお店で使うメニューとか。

餃子の王将みたいに店舗ごとに特別メニューを作って出してもいいということだと、レギュラーとしてどのお店でも共通にあるメニューの部分は固定として一定のスペースを確保しておき、共通のデザインでまとめる。

特別メニューを掲載するスペースには、料理写真大1、小1、タイトル(品名)1、見出しコピー1、説明文30字1、値段1、といった設定をしておき、店ごとにその要素組み合わせてレイアウトしたものをはめ込み、全国の店舗分のメニューを作って行く…というやり方がモジュール的なデザインということになるのだろうか。

人の顔、福笑いみたいなものを想像してもらえればいいかもしれない。目のカタチが違うものを当て嵌めて行けば、あるものは笑ってるように見えたり、また別のものを当て嵌めたら怒っているように見えたりする、その目のそれぞれのセットがモジュールということになるのだろう。

もしかしたら、1篇の小説なんかも起承転結と最初から順に書いて行くのではなくて、モジュール的に部分部分を作って後で、全体の構成と照らし合わせて組み合わせて行くというやり方もあるのかもしれない。

ただ、見た目モジュール構造的なデザインばかりだと、どれも似たようなもんですぐ飽きる…ってレベルのものだと味気ないし、そうなると1点ものの価値が高くなるのかもしれない。

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